ヘンプといえば、日本語で「大麻」と説明されることが多いために、なんとなく「怖い」というイメージを持っている人が多いかもしれません。
しかし、麻やリネンとかと近い種類の植物です、とまた違った印象を持つはず。その通りで、ヘンプは日本で古くから衣服として使われたり、暮らしの中で活用されてきた植物なのです。
また、ヘンプは気候変動などの環境変化に対しても強く、今注目されている植物です。
この記事では、そんなヘンプの特徴や歴史などを解説していきます。加えて、大麻との違いについても解説するので、参考にしてみてください!
ヘンプ素材とは麻の一種
ヘンプ(Hemp) とは、大麻とも呼ばれており、植物の麻の一種です。
正確には、カンナビス・サティバ種に属する植物の一種となります。
大麻の中でも特に産業用に栽培される品種で、精神作用のある化合物THC(テトラヒドロカンナビノール)の濃度が低いのが特徴です。ヘンプは、繊維、紙、生分解性プラスチック、食品、燃料の生産など、さまざまな用途に使われています。
また、多くの健康効果があるとされるCBD(カンナビジオール)の生産にも利用されています。
ヘンプは多くの国で栽培・販売が合法ですが、さまざまな法律や機関によって規制されています。
もう少し詳しく説明すると、大麻の中でもハイになる成分として知られるTHCをほとんど含まない品種を「ヘンプ」とよんでいます。
ヘンプとマリファナの違いってなに?
ヘンプについて、マリファナとの違いも含めてもう少し詳しく説明します。
ヘンプは元々、カンナビスと呼ばれている植物でした。カンナビスの原産地はチベットや中央アジアとされています。
ヘンプは日本には約1万年ほどまえに伝わっており、茎や繊維から布や縄などが作られていました。
また、麻の実は食用することができ、今でも七味唐辛子の原材料となっていたり、いなり寿司の具材として利用されてきました。
一方で、マリファナ(Marijuana) は同じくカンナビスから派生した植物の一種です。こちらは精神作用のあるTHC(テトラヒドロカンナビノール) が一定以上含まれています。
ややこしいことに、近年ではこのマリファナが差別的な用語だとされ、マリファナをカンナビスと呼ぼうとする動きがあります。
わかりやすく、図にまとめてみました。
上の図を見るとわかるように、大麻の元となった植物がカンナビスと呼ばれており、それぞれヘンプとマリファナに分かれました。
ヘンプとマリファナの最も大きな違いは、CBD、THCの成分の割合です。
THCの割合が0.3% 以下の品種をヘンプ、20% を超えるものをマリファナと呼ぶことが多いようです。
これには理由があります。
ヘンプとは、服や生活用品を作るための繊維を取るために改良された品種なのです。
繊維が多く取れるように改良されてきたので、繊維質の部分である茎の部分が長く太くなっています。
成長エネルギーのほとんどが茎で消費されるようになったので、逆に花や実、葉などにはエネルギーが行かなくなり、THCの成分が少なくなっていったのです。
これとは別に、用途によって名前を呼び分けることがあります。具体的には、
ヘンプ:繊維や食料用など、主に工業用
マリファナ:医療や嗜好品などの消費用
で分けられることがあります。
ちなみに、現在の日本で栽培・利用されている麻のほとんどはヘンプであり、THC成分はほとんど含まれていません。
ヘンプの歴史
ヘンプは、人間の生活の中で長い間利用されてきた歴史があります。
人類が栽培した最も古い作物のひとつであり、1万年以上前からさまざまな用途に使われてきました。
古代中国では、古くから麻は紙や織物、食料の生産に利用されていました。また、薬用や娯楽用麻薬としても使用されていたことがわかっています。
古代ヨーロッパでは、ヘンプはロープ、紙、織物の生産に使われていました。
米国では、初期の入植者が繊維を得るためにヘンプを栽培し、いくつかの州では法定通貨として使用されたこともありました。
20世紀に入ると、合成繊維の台頭や大麻の規制強化により、ヘンプの使用は減少しました。
しかし、近年、持続可能で環境に優しい作物としての可能性から、ヘンプへの関心が再び高まっています。
現在では、繊維、紙、生分解性プラスチック、食品、燃料の生産など、幅広い用途で栽培・利用されています。
また、多くの健康効果があるとされるCBDの生産にも利用されています。
ヘンプの利用価値は?
ヘンプのメリットとしては、ズバリ「CBDの含有率が高いこと」です。
つまり、CBDのみを分離する手間をある程度省くことができるのです。
ここで注意して欲しいのが、CBDの含有量が多いわけではないということです。
カンナビスの方がCBDの含有量は多いですが、それ以上にCBD以外の物質の量も多くなっているのです。
そのため、ヘンプオイルなどのヘンプ由来のCBD成分は、ヘンプを大量に生産し、濃縮することによって生成されています。
これにより、次のような問題が懸念されているのです。
加工の観点から見えるヘンプの課題
ヘンプの課題としてよく挙げられるのが、「生物濃縮」です。
生物濃縮とは、ある物質が環境中に曝露された結果、時間とともに生物の組織や器官に蓄積されることを指します。
ヘンプの場合、栽培された土壌や空気中の毒素や有害物質を吸収・蓄積することが懸念されています。
これは、ヘンプが重金属、農薬、その他の汚染物質など、環境中のさまざまな化学物質や汚染物質を吸収・保持する特異な能力を持っているためです。
ヘンプに含まれる毒素や有害物質の生物濃縮の可能性が懸念されるのは、これらの物質がヘンプから作られる繊維、紙、食品などの最終製品に含まれる可能性があるからです。
これらの製品が人間によって消費または使用された場合、毒素やその他の有害物質が摂取または吸収され、健康に悪影響を及ぼす危険性があります。
なお、麻が毒物や有害物質をどの程度蓄積するかは、対象物質、環境中の濃度、暴露時間など、さまざまな要因に左右されます。
また、有機農法の使用や土壌の汚染物質検査など、適切な栽培方法が麻の生物濃縮のリスクを最小限に抑えるのに役立つことも重要なポイントです。
CBDとの関連でいえば、大量のヘンプを濃縮して作っているため、生物濃縮が起きやすいとされています。
土壌などの安全性の規制などは現段階ではないため、気になる人はその製品が発表している資料などを読み込んでみると良いでしょう。
また、ヘンプを抽出する際の方法などにも様々な方法があります。
この中でもより早く、効率的に抽出するやり方には人間に有害な物質を使用する方法があり、これが製品に混ざっていたりする可能性が懸念されています。
日本で売っているヘンプオイルなどは国の基準をクリアしたものなので安全性は高いですが、海外などで使用する際には注意が必要です。
アントラージュ効果はどちらの方が高い?
アントラージュ効果とは、単一の物質だけを摂取するよりも、多くの物質と一緒に摂ることによって相乗的に効果が高まることを言います。
例えば、アイソレート製品はヘンプやカンナビスからCBDという成分だけを抽出したものです。
一方で、ブロードスペクトラム製品とは、CBDだけではなくいくつかの成分を分離して作られたものです。
これらを比較した場合、同じCBDの量であったとしても、幾つもの成分を同時に摂取するブロードスペクトラムの方が効果が強くなります。
言い換えると、ブロードスペクトラムの方がより少ない量で満足できるということです。
では、ヘンプとカンナビスに話を戻します。
ヘンプは THCなどの量が少ないと言いましたが、同様にそれ以外の成分についても含有量は少なくなっています。
一方で、カンナビスはTHCを含む幾つもの成分があります。具体的には、以下の3つです。
- カンナビノイド
- テルペン
- フラボノイド
カンナビスから抽出することのできる成分は、ヘンプよりも圧倒的に多くなります。
そのため、カンナビスの方がアントラージュ効果が強く出ることになります。
ヘンプは合法?それとも違法?
記事に書いてきた通り、ヘンプには服やロープなどを作る原料としての「麻」という観点で用いられてきた過去があります。
一方で、大麻などと同じカンナビスなので、THCなどの成分が多少なりとも含まれているという側面もあります。
このため、ヘンプを合法・違法のどちらとするかは国や地域によっても異なっています。
代表例として、日本とアメリカの場合について紹介します。
日本ではCBD自体は合法
国内では、CBD製品を販売することは違法ではありません。
そのため、ヘンプ由来であったとしてもCBDにしてしまえば問題ありません。
ただし、国内で生成することは基本的には法律にひっかかるため、注意が必要です。
こういった経緯もあり、国内産と呼ばれるほぼ全ての製品は最終工程の瓶詰めだけをしているか、もしくは品質チェックをしているのみとなっています。
アメリカの場合
アメリカでは、州ごとに規制の法律が異なっています。大きく分けると、次の3つの州があります。
- カンナビス、ヘンプがどちらも合法
- CBD製品であれば、すべて合法
- どちらも違法
州によっては使用や所持が犯罪になることもあるので注意してください。
また、医療用・嗜好品のカンナビスで扱いが違ったりするのでこのことも心に留めておいてください。
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